noteで連載していた「沈黙の海」を、本日Kindleで出版しました。
最初に出版したのは英語版でしたが、ようやく日本語版を世に出せます。
正直、少し緊張しています。
母国語で出すということは、もう言い訳ができない気がして。
逃げ場のないような感覚です。
けれど、日本語が私の“母艦”です。
オリジナルの日本語があるからこそ、そこから他言語へ航海できる。
そう思ったとき、日本語版『沈黙の海』をどうしても出版したくなりました。
本作は、私にとって初めての長編小説です。
少しだけ、書くきっかけになった出来事を話します。
ずいぶん前、新宿の女性用カプセルホテルに泊まったことがありました。
友人と探して、やっと見つけたそのホテルでのこと。
シャンプーのあと、パウダールームで髪を乾かしていると、
部屋の隅で静かに泣いている女性がいたのです。
少し話すと、帰りたくない理由があるのだと。
そのとき、私には何もできなかった。
けれど、その無力感と「声を持たない苦しさ」がずっと心に残っていました。
あの時の無力感と、女性の置かれている現実。
その光景は、ずっと私の中に残っていました。
——もしもあの女性が、別の選択をしたら?
——もしも、沈黙を破って、海の向こうに進めたら?
そんな問いが、物語となって生まれたのが『沈黙の海』です。
あらすじ
沈黙は、人を守るはずだった。それが、すべてを壊す日が来るまでは。
この物語を書こうと思ったのは、
「声を持たない人の孤独」をどうしても描きたかったからです。
夫婦の沈黙、愛という名の断罪。
偶然の出会いが、彼女をどこへ連れていくのか——。
『沈黙の海』
壊れかけた日常の中で、
“生きる”ために選んだ女性の物語です。
👉 Kindleで配信中
Kindle Unlimitedに加入の方は読み放題です。
今週は「沈黙の海」フランス語版も出版予定です。
KindleとKoboの二つのプラットフォームを使っての試みです。
来週出版予定 フランス語版「沈黙の海」

フランス語版「沈黙の海」
表紙には、川瀬巴水の作品を選びました。
その理由は、絵の中に描かれた船にあります。
船は、私にとって「再生」の象徴です。
主人公・詩織が、ただ沈黙に沈むのではなく、
自ら漕ぎ出し、新たな場所へ辿り着けるように——
そんな祈りを込めて、この一枚を選びました。
パブリックドメインの絵画を使い、
トリミングと色調整を施し、
最後にフォントを重ねて表紙として仕上げています。
フランス語と日本語、言語が変わるだけで、
こんなにも雰囲気が変わるのが不思議で、そして面白いですね。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。